Monbi’s blog

ぶっちゃける~まとめブログ

アニメ制作会社のブラック労働問題および、その起源はなんなのかをわかりやすく解説 製作委員会方式/低賃金

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こんにちは、monbiです。

最近、と言いますか、かなり前から何かと話題になっている「アニメの作画崩壊

 

アニメ市場が近年急速に拡大するにあたり、世間での認知度やアニメへの風当たりがよくなってきたことや、SNSの普及により多くの人に制作の裏側が広まりやすくなったことで「制作会社がとんでもなくブラック労働だった」ことが明るみになり問題になっています

 

そのことで様々な意見が飛び交っており、アニメの大変さや苦労を知っている人は「アニメの作画崩壊も仕方ない、熱意や意気込みは本物だ」とフォローする人もいますが、逆に「原作がかわいそう」「大変なのはわかるがプロなのだから仕事はしっかりとしてほしい」といった厳しい意見を言う人たちもいます。

 

そんな、今問題になっているアニメ制作会社のブラック労働問題を

の三つの項目に分けて、解説していこうと思います。

アニメ制作会社がブラック労働になってしまう仕組み

 なぜ、アニメ制作会社がブラック労働を強いられるような過酷な環境で仕事をしなければいけなくなってしまったのか?

 

もちろん言葉一つで説明できるような簡単な問題ばかりではなく、複雑な問題が沢山絡み合ってできています。今話題になっている製作委員会方式の問題など色々ありますがわかりやすいように図などと使い順に追って説明します。

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元請(もとうけ)制作会社

アニメーションの企画、製作、そして制作までをこなす会社

グロス請け制作会社/下請け制作会社

元請制作会社から、演出や作画、背景、撮影などの業務を一括で受注し制作業務の全般を行う会社

専門スタジオ

作画、背景、撮影などのそれぞれの専門分野の部分だけを受注し制作する会社

(ここで疑問に思ったであろう「製作」「制作」の違いですが、本来の意味は違うのですが、アニメ業界の役割的に話すと製作=  企画・運営制作 =  実際にアニメを作ることと思ってくれればいいです。)

 

現在、上の図にある通り「広告収入方式」と「製作委員会方式」の二つの方法がアニメ業界であります。

 

「広告収入方式」はスポンサーが自分の紹介したい商品を紹介してもらうためにテレビ局に広告料を払います。そして、その広告料からテレビ局はアニメ会社に、製作費を払い製作、および制作を依頼し放送枠を準備するのです。

一方、「製作委員会方式」は、スポンサーが集まり製作委員会を作ります。そしてその製作委員会にスポンサーが出資し、出資を受けた製作委員会がテレビ局から放送枠を買い取り、元請制作会社に制作を依頼するのです。

 

しかし、今のところ「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」などの昔からの超大手アニメ以外は全て「製作委員会方式」が主流の製作方法になっています。ですので現在、この「製作委員会方式」によるアニメが作られるまでのシステムでブラック労働などの問題が起きている。というのを認識しておいてください。

 (なぜ、「広告収入方式」が使われないのかは「その2-その仕組みが出来上がってしまう理由や補足」でお話しします。)

 

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次に問題なのが権利の仕様です。図の通り「広告収入方式」では、元請制作会社が製作に伴い発生する権利を保有します。

一方で「製作委員会方式」では、製作に伴い発生する様々な権利は製作委員会が保有しており、出資しているスポンサーはアニメが成功したとき、DVDやグッツなどの売り上げの二次利用収益を受け取ることができます。

 

「広告収入方式」ではメリットとして、基本的に元請制作会社に製作が一任されていたので、意見が混雑せず制作がとてもしやすいということ。

製作に伴い発生する権利を元請制作会社が保有することが出来るので、アニメがヒットした場合元請制作会社が多くの利益を上げることが出来ます。

デメリットとしては、アニメがヒットしなかった場合アニメグッツや円盤の製作費用を全て自分たちが用意するため多くの負債を抱える可能性があることです。

 

一方、「製作委員会方式」のメリットとしては、資金が集めやすいという点や、アニメが不況だった時、複数の会社で負債をおぎなえるので出資するリスクが小さいという点があります。

逆にデメリットとしては、一社当たりの収益が小さくなってしまったり、多くの会社がかかわることになるので意思疎通が難しくなってしまい、製作効率が悪い点や、アニメへ多くの意見が集まってしまうこともあるため俗に言う出来栄えが可もなく不可もない量産型アニメが多くなってしまうことです。

 

しかし、このように低リスクでアニメを作ることが出来るようになれば、ヒットすれば制作費用の何十倍何百倍の利益を上げることが出来るアニメは、大量に作られるようになるります。

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 グラフのように、アニメの数と言うのは年々増え続けています。

 

元請制作会社が、テレビ局から製作資金を集めアニメを作り、権利収入や二次利用収益で利益を上げていく。

このような収益方法から「製作委員会方式」に変わったことで製作委員会から制作資金+ 報酬をもらう形で元請制作会社が請け負い、そして多くのアニメを沢山作ることで収益を上げていく形に変わっていったのです。

 

その結果。元請制作会社は数をこなすことでしか売り上げを伸ばすことが出来なくなるというわけです。

 

それに加え、「製作委員会方式」では、製作費が足りないとき、製作委員会に交渉したとしても、一方のスポンサーが許可を出してももう一方のスポンサーが許可を出さないことがよくあります。

数が多いときはそれこそ30~50のスポンサーの意見が飛び交うわけですから実質製作費を上げてもらうことが出来ない状態になっているのです。

その結果、30分12話構成を1クールとした場合、約二億と言われていますが、その従来通りの金額で毎回進行していくことが多く、それだけではなくアニメ制作会社の数がアニメの数の増加や、企画、運営、権利の管理などはせず、受注して制作するだけでいい今の環境のせいで参入する数が多くなっていることで、製作委員会の方もより安く制作してくれる会社に依頼したりと、受注戦争になっているのもクリエイターの負担が増える要因になっています。

その仕組みが出来上がってしまう理由/補足

ここでは先ほどお話できなかったお話や、より深いお話もしていきたいと思います。

 

まず初めにお話しした「広告収入方式」ではなく「製作委員会方式」に移り変わっていったのか?「広告収入方式」がなぜ使われなくなっていったのかを解説します。

 

「広告収入方式」は、1990年代頃まで主流だった方式ですが、それ以降使われなくなっていきました。

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なぜかというと、図のように、「広告収入方式」はスポンサーが自分の商品を紹介したいために広告料をテレビ局に払っています。つまり、テレビ局は別にアニメじゃなくても視聴率が取れる番組があるならばそちらに放送枠を準備し、製作費を支払います。つまり、面白くて売れると自負した作りたいアニメがあっても、テレビ局がGOサインを出さなければ作ることが出来ません。普通の会社では、会社で利益を上げるためにプロジェクトなどを企画し、それを自ら実行していくことが出来ますが、アニメ制作会社はそのプロジェクトを許可する権利が会社にはなく、テレビ局側が実質にぎっているようなものだったのです。

 

それに単体で大きい金額を出してくれるところは他にほとんど無かったのです。

当時テレビ局の人達は、今の時代とは違いアニメに良い印象を持っていません

子供しかみず、価値も需要も低いと思っていたからです。それに、成功した場合元請制作会社の利益は大きいですが、失敗した場合大きな負債を抱え倒産することもあり、この方法は次第に使われなくなっていったのです。

 

じゃあこの「広告収入方式」を使ったときのような、[アニメ制作会社にリスクが集中する]、かつ、[テレビ局がOKといったアニメしか放送できない]ようなことをなくし、逆に[安全に]、かつ、[作った作品を確実にテレビで放送する]にはどのような方法がいいかということで、負債をスポンサーに分散することで、アニメ制作会社の倒産リスクを減らし、テレビの放送枠を買うことで作ったアニメを確実に放送することができる「製作委員会方式」になっていきました。しっかりとした理由があったからこの方法になっていったわけですね。

 

あの有名な漫画家兼アニメーション作家の手塚治虫さんも、クリエイターが作ったアニメ作品をどうしてもテレビで放送したいために、テレビの放送枠を買ってでも放送する仕組みを取り入れた第一人者ということで有名です。

 

解決しなければいけない問題や、解決するには?

現在の「製作委員会方式」のまま、今のクリエイターの現状を解決したいのならば、答えは一つしかありません。

 

「制作期間と制作費を上げてもらう。」

 

この一点のみです。しかしこれは残念ながら現実的にはほぼ不可能でしょう。

ただでさえ高額なアニメ制作費用ですが、それを、テレビ局から放送枠を買い取ってまで無料で放送しているのです。当然、制作費用を回収することさえ難しいのに、上げてもらえるとは到底思えません。

今は円盤が1万枚売れればいい方とされていますが、(雑な計算ですが)1万円の円盤が一万枚売れたところで一億の売り上げしかないので、制作費の約半分すら回収できるか怪しいくらいです。

残りを、グッツ、劇場の総集編、パチンコ、ネット配信などで回収していくのですが、売れなければすべてがおじゃんです。

徹底的に予算削減とリスクオフを重視し量で勝負している現在は上げてもらうのは無理でしょう。

 

そこで現在、クラウドファンディングパートナーシップ方式などの新しい資金集めの方法が色々現れてきています

 

クラウドファンディングは文字通り、ネット上限定グッツや特典などを見返りとした制作資金を出資してもらい、その資金をもとに制作していくというものです。

メリットとしては、もともと知名度の高い作品なら問題なく集めることが出来、赤字が出ない点がありますが、

デメリットとしては、オリジナルや誰も知らない作品には全く資金が集まらない、資金の調達率が不安定という点があります。

 

続いてのパートナーシップ方式とは、アマゾンやNetflixのような大手動画配信サイトから配信権の購入と言う形で出資してもらい、他の残った権利などは制作会社に残るので、そこから二次利用収益を得ることが出来るというものです。

メリットは、権利などが残り、制作会社は大きな利益を残すことが出来る可能性があります。

デメリットは、企画、運営、制作、権利の管理など全て単独でやらなければならないので制作会社の手腕が問われることです。

 

これらの方法は、いずれも制作会社が会社としての実力を大きく問われます。

今までの制作会社は、下請けとして自らは何もせず受注するだけで最低限の利益を獲得することが出来ていました。

しかし、作画の質と言うものが大きく重要視されだしている現在、クリエイターの仕事量が増えてきています。そうなればいずれ崩壊するだけです。

リスクを取り、クリエイターだけでなく、経営陣も実力がある会社のみが生き残っていくようになっていかなければ先は無いでしょう。

 

ところが、制作会社だけが変わればいいというわけではありません。

現在のテレビ媒体へ弱腰や、海賊版、違法視聴などの行為を減らしていくことも重要です

現在の「製作委員会方式」では、いくら海賊版や違法視聴などで収益が減らされても制作会社には実質的な損はありません。

しかし、スポンサーの収益が減る分製作費を上げてもらえなくなったり、パートナーシップなどの方式になり自ら権利を持ち二次利用収益で稼ぐようになった時に、今度は自らの利益が少なくなってしまうからです。

ただでさえ、放送枠を買ってまでテレビで無料で流し、そのせいで制作費を回収するために一枚数千円から数万円もする円盤を売らなければいけない現状であり、なおかつ、

 

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このようにアニメのネット配信収益が年々かなり伸びているというのにアニメを全て見ることが出来るような総合的なプラットフォームがいまだに無い(カドカワの社長によると、プラットフォーマーが一番儲かるので皆やりたがり公式アニメ視聴サイトが乱立する)せいで、違法視聴サイトなんかに便利さや利用率で押し負けている現状も変えていかなければいけないでしょう。

 

まとめると、

アニメを作るために必要な「資金調達方法」

アニメでの利益を違法サイトなどに逃さない二次利用収益方法の確立」

アニメ制作会社が今後は自分たちでやっていけるように「意識改革と成長」

現状この全てに問題があるので、少しずつでも改善していく必要があるようです。

 

 

使用した素材

ボイロネタ素材4 / 霜山 シモン さんのイラスト - ニコニコ静画 (イラスト)